雇用保険は労働者が失業した際の補償や、失業を予防を目的とした保険で、政府が運用しており、ハローワーク(公共職業安定所)が窓口となる制度です。
今回はその雇用保険について説明します。
こんな方におススメの記事
・フィナンシャルプランナー(FP)の資格取得のために、「雇用保険」の内容を勉強したい方。
・フィナンシャルプランナー(FP)として活躍している方で、「雇用保険」の内容を改めて、基礎に戻って確認したい方。
雇用保険とは
雇用保険は労働者が失業した場合、雇用の継続が困難になったときなどに給付(失業等給付)を行う制度です。また、失業の予防や労働者の能力開発、向上を図るための事業(雇用保険二事業)なども行っています。
被保険者
適用事業に雇用される労働者は原則雇用保険の被保険者となります。被保険者は一般被保険者、高年齢被保険者、短期雇用特例被保険者、日雇労働被保険者の4つに分類されます。
一般被保険者・・・65歳未満の常用労働者
高年齢被保険者・・・65歳以上の常用労働者
短期雇用特例被保険者・・・労働時間週20時間以上かつ雇用期間31日以上のパート等
日雇労働被保険者・・・日雇労働者
保険料
雇用保険の保険料は失業等給付分は被保険者と事業主が折半し、雇用保険二事業分は事業者が全額負担となります。
※一般の事業の場合・・・賃金総額の0.9%(労働者負担0.3%、事業主負担0.6%)
雇用保険の給付の種類
雇用保険の失業等給付には求職者給付、就職雇用給付、教育訓練給付、雇用継続給付があります。
求職者給付(失業した時に給付)
求職者給付は失業者が求職活動中に支給されるものです。一般被保険者には基本手当、技能習得手当が支給され、高年齢被保険者には高年齢求職者給付が支給されます。
就職促進給付(早期に再就職した時に給付)
就職促進給付は早期に再就職したときに支給されるものです。就業促進手当、移転費、求職活動支援費が支給されます。
教育訓練給付(能力向上のために給付)
教育訓練給付は労働者の能力向上のために支給されるものです。教育訓練給付金、教育訓練支援給付金が支給されます。
雇用継続給付(高齢で働く、育児・介護休業を取得した時に給付)
雇用継続給付は高齢になっても働く場合や育児・介護休業を取得した場合に支給されるものです。高年齢雇用継続給付、育児休業給付、介護休業給付などがあります。
基本手当
基本手当は一般被保険者(65歳以上の常用労働者)が失業した時に支給される手当です。
支給要件
①働く意思や能力のある人が、求職活動をしているにも関わらず就職ができない状態である事。
②離職日以前2年間に被保険者期間(※)が通算して12か月以上あること。
ただし、倒産や解雇、退職勧奨などにより離職した者(特定受給資格者)や契約更新できなかった有期契約労働者、正当な理由(体力の衰えや結婚による転居など)で自己都合で離職した者(特定理由離職者)の場合
離職日以前1年間に被保険者期間が6カ月以上あることとなります。
※被保険者期間は離職日から遡って1か月ごとに区切った期間に賃金支払いの基礎となった日数が11日以上ある月を被保険者期間1カ月としてカウントする。
基本手当日額
基本手当の日額は賃金日額×一定率(年齢・被保険者期間によって異なる)
※賃金日額は「退職前6カ月間の賃金総額÷180」で、下限額および年齢ごとの上限額があります。
所定給付日数
自己都合や定年などの離職の場合は90日~150日
雇用期間1年以上10年未満・・・90日
雇用期間10年以上20年未満・・・120日
雇用期間20年以上・・・120日
特定受給資格者や特定理由離職者は90日~330日
雇用期間5年ごと、年齢は30歳から5歳ごとに日数が異なります。
受給期間及び支給開始日
受給期間は1年間
※受給期間を過ぎると所定給付日数が残っていても、それ以降の基本手当は支給されない
※病気やケガ、出産等の理由で引き続き30日以上就職できない期間がある場合は最大で4年間延長できる。
支給開始日は待期期間が7日
自己都合退職などはさらに給付制限が最長3カ月となります。
高年齢求職者給付
高年齢求職者給付は65歳以上の被保険者が失業した場合に支給されます。(65歳以上の被保険者には支給されない基本手当の代わりとなるもの)
受給要件
①65歳以上の被保険者(短期雇用特例被保険者や日雇労働被保険者を除く)が離職。
②働く意思や能力のある人が、求職活動をしているにも関わらず就職ができない状態である事。
③離職日以前1年間に被保険者期間が6カ月以上あること。
支給額
雇用保険期間1年未満・・・基本手当日額の30日分
雇用保険期間1年以上・・・基本手当日額の50日分
支給開始日
基本手当と同じ
再就職手当
再就職手当は基本手当の受給資格者が安定した職業に再就職したときに支給される手当です。
受給要件
受給要件は基本手当の所定給付日数1/3以上の支給額を残し、安定した職業(雇用期間1年間超)につく事です。
支給額
再就職手当の支給額は基本手当日数の60%か70%が支給されます。
所定給付日数に対する支給残日額の割合が3分の1以上なら60%
所定給付日数に対する支給残日額の割合が3分の2以上なら70%
支給されます。
就業手当
就業手当は基本手当の受給資格者が臨時的な職業に再就職したときに支給される手当です。
受給要件
受給要件は基本手当の所定給付日数1/3以上の支給額を残し、臨時的な職業(雇用期間1年間未満)につく事です。
支給額
再就職手当の支給額は基本手当日数の30%支給されます。
高年齢雇用継続給付
高年齢雇用継続給付とは60歳以後の給料が大きく下がった時、そのまま引退されてしまうと国にとって損失となってしまうため、雇用保険から給料の上乗せがされる制度。
高年齢雇用継続基本給付金と高年齢再就職給付金があります。
高年齢雇用継続給付金
高年齢雇用継続給付金は基本手当を受給しないで60歳以後も勤めている場合に支給される給付金
受給要件
・60歳以上65歳未満の雇用保険の被保険者等
・雇用保険の加入期間が通算で5年以上
・原則60歳到達時の賃金に比べて75%未満の賃金で働いていること
支給額
支給額は下記の通りとなります。
低下後の賃金が61%未満・・・60歳以後の賃金×15%
低下後の賃金が61%以上75歳未満・・・60歳以後の賃金×0%~15%
低下後の賃金が75%以上・・・0円
支給期間
支給期間は60歳~65歳に達するまでとなります。
高年齢再就職給付金
高年齢再就職給付金は基本手当を受給して60歳以後に再就職し、基本手当の支給残日数が100日以上ある場合に支給される給付金です。
受給要件
・60歳以上65歳未満の雇用保険の被保険者等
・雇用保険の加入期間が通算で5年以上
・原則60歳到達時の賃金に比べて75%未満の賃金で働いていること
支給額
支給額は下記の通りとなります。
低下後の賃金が61%未満・・・60歳以後の賃金×15%
低下後の賃金が61%以上75歳未満・・・60歳以後の賃金×0%~15%
低下後の賃金が75%以上・・・0円
支給期間
支給期間は基本手当の支給残日数が
100日以上200日未満・・・1年間
200日以上・・・2年間
育児休業給付
育児休業給付金は被保険者等が育児休業を取得したときにもらえる給付金です。
受給要件
・1歳未満の子を養育するために育児休業を取得すること
※パパママ育休プラス制度に該当する場合は1歳2か月未満、保育所等の利用不可の場合は1年6カ月、または2歳未満)
・休業開始前2年間に被保険者が通算して12か月以上あること。
支給額
休業開始時賃金日額×休業開始から180日目までは67%
181日目以降は50%
支給期間
育児休業開始日から子が1歳(最長2歳)
介護休業給付
介護休業給付金は被保険者等が介護休業を取得したときにもらえる給付金です。
受給要件
・対象となる家族を介護するために介護休業を取得したこと
・休業開始前2年間に被保険者が通算して12か月以上あること。
支給額
休業開始時賃金日額×67%
支給期間
対象家族1人につき介護休業開始日から通算して93日まで、最大3回まで分割可能