住民税や固定資産税の時効ってあるの?時効の成立や時効の中断の条件について解説

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税金を払わないとどうなるのか?税金って無くならないかなぁ。逃げ切りたい。もしかしたらこの記事を見つけた方はそんな疑問や考えを持っている方かもしれません。

そんな方々に向けて、税金の時効について、市区町村で実際に徴収業務に5年間携わってきた筆者が解説をします。

 

地方税の時効はあるのか?

地方税(住民税(市県民税)、固定資産税、バイク・原付(軽自動車税)、国民健康保険税)の時効はあるのか?

『法律上、規定はあります。ただ、成立はかなり厳しい。』

が結論です。理由を下で述べていきます。

税金の徴収権が時効により消滅(時効が成立)するのはどんな時?

地方税の徴収権は法定納期限から5年経過すると成立します。(地方税法18条)

地方税法第18条

地方団体の徴収金の徴収を目的とする地方団体の権利(以下この款において「地方税の徴収権」という。)は、法定納期限(次の各号に掲げる地方団体の徴収金については、それぞれ当該各号に定める日)の翌日から起算して五年間行使しないことによつて、時効により消滅する。

 

また、民法の規定の時効の援用(時効の完成を主張すること)は必要ないとされています。

つまり、地方税(住民税(市県民税、固定資産税、原付・バイク(軽自動車税)、国民健康保険税等)を5年間納付しなければ時効が成立し、税金の納付をしなくてよくなります。

じゃあ払わなければいいのか、簡単じゃん!と思ったかもしれませんが、そうはいきません。

税金の徴収権が簡単には時効により消滅しないような規定が法律で定められています。

税金の徴収権の時効の中断要件

税金の徴収権の時効による消滅を中断する要件については「地方税法第18条の2、民法の規定を準用(地方税法第18条第3項)」に規定されています。

具体的にはどのような場合かというと、

①税金の滞納で差押をされた時

②対象となる税金を自分で納付した時

③対象となる税金を払うという納付誓約書を提出した時

④催告書(税金の納付を促す書類)が送付された後の6カ月間

①~③までいずれかが行われた時点で、税金の徴収権の時効の起算日がリセットされ、改めて5年間徴収権が発生します。

④は催告書が発布されてから6カ月以内に差押がされないと時効が完成するような制度となっています。

それまでは見逃していた、徴税吏員もこの時効が完成しないよう必死に調査を行い、差押を実施するので、実質、時効が完成する事はほぼないと考えてもらった方が良いと思います。

その理由を下記で解説します。

時効を完成させてしまうのは職務怠慢!住民から訴えられる可能性も

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徴税部門に配属され、徴税吏員になると、通常初任者研修を受けます。

そこでは、

税金の徴収権を時効により完成させてしまう事は徴税吏員の職務怠慢である

という事を何度も説明を受け、刷り込まれます。

通常本人の同意や裁判所を通さなければ得られないような個人情報の取得ができたり、拒否や妨害した場合に、調査を受ける側に罰則規定が設けられているかなり強力な調査権限を各徴税吏員は有しています。

憲法に定められている「納税の義務」を適正かつ公平に実現するために、そのような権限が認められており、それを権限を5年もの間行使せずに、そのまま放置してしまった場合、その徴税吏員は職務怠慢である。という論法です。

それは本当にごもっともな話で、職務怠慢であるとして、住民から、徴税吏員個人に訴訟され、損害賠償が請求されるような事例も実際にあります。

訴訟を起こされた場合に損害賠償を支払わなければならなくなるなんて、必死になるのは当然と言えるのではないでしょうか。

多くの自治体は時効をシステムで管理

当然、時効が完成しないよう多くの自治体では時効を迎えそうな対象者を機械的に抽出できるシステムを構築しています。そしてその抽出したデータを基に対象の滞納者を優先的、集中的に納税交渉にあたったり、差押をして時効の起算日のリセットをしますので、実際に時効が完成する事はほぼないと言えるでしょう。

まとめ

以上より税金の徴収の時効は法律上規定はあるものの、実質厳しいという事です。

くれぐれもこの記事を最後まで読んでいただいたみなさんは、時効を完成させてやれとか税金を払わなくても良い、逃げ切れないかなぁなどと考えないようにしてくださいね!